失敗分析: 債務のこと

破産という不幸ネタであんまり引っ張るのは,なんか下品だなぁと思いつつ. という前口上は毎度のことなので省略です.

そして,いつもながら,ご指摘頂いた方のお名前は伏せます.

前回のおさらい

破産後に社会からどんな制裁を受けると予想しているのか…とか、債権者に対する申し訳ないという気持ちが全く無いのか…とか

このtweet,前回も引用しましたが,質問に答えませんでした.

「ねえねえ,今どんな気持ち?」というアスキーアートが想起されるような,軽率な質問. 一般論として,こういう質問は危険です. 野放しにすると死人が出かねないので.

その点,重々に押さえた上で.

しかし,私は,(手続きの全てを終えておらず,渦中のまっただ中ですが),心理的には整理がついています. 2つの質問に答えておきたいと思います.

Q. 破産後に社会からどんな制裁を受けると予想しているのか

質問の1つめについては,質問が「社会から」という曖昧模糊な表現なので答えづらい….

答えづらいというのは,都合が悪いというのではなくて,曖昧過ぎて具体的に答えようがないわけです. 普通の破産は民事事案であり刑法事案ではありません. 国家が代表するような種類の社会から制裁を受けることは無いので.

とはいえ,曖昧模糊を解釈した上で言うならば,という見解はあって,それは本稿の後半で.

Q. 債権者に対する申し訳ないという気持ちが全く無いのか

質問の2つめについて,ストレートにいえば,申し訳ないと思いますよ. 建前でなく,本音で. 借りたものは返す,払うものは払う. これ,言うまでもなく,商売のキホンのキですからね.

申し訳ないと思わないはずがないです. 日本の義務教育を受けて,通信簿の道徳の欄に問題がない人なら.

最初の起業をしてから約12年,急激に資金繰りが悪化してギブアップまで2年として差し引き,ざっくり10年間です. この期間は,綱渡りながらも信用を得て商売していたわけですし.信用を得る程度の,最低限の商倫理はある(あった)ってことです.

己の商倫理と現実との折り合いの付け方と,教訓

ということは、お役所なり裁判所なりというのは、結婚という、ひとつの法に定められた形式をとった男女に関しては、愛情という接着剤の効果をこの上なく信じているのか、ああしなさい、こうしなさいということは言わないけれども、一度、離婚という、社会の慣習を破り秩序を乱すような行動に出る者がいると、そんな奴の責任感なぞとても信じられないから、きちんと文書にして年数まで明記して

上記は,小説家/エッセイストの景山民夫氏が書いたエッセイに「離婚調停書」の引用です.

離婚と破産は違いますが,似たところがあります. 「オマエは社会の慣習を破るダメなヤツだから,代わりに裁判所が一線を引いてやろう.」という点で.

刑事にせよ,民事にせよ,裁判所は,その国家の良心の代表です.ときどき,変な判決を出すのも含めて. 「”申し訳ない”という気持ちに高低などないっ!」とドヤ顔するのも正論ですが,日本の良心たる裁判所,その論拠となる破産法が回収の優先度を決めていることもまた事実です.

破産法の条文や運用について文句のある方は,裁判所に駆けこむなり,最高裁判所裁判官国民審査のときに全員に×をつけるなり,国政選挙に積極的に関わるなりして頂ければ宜しいかと思います.

残債との折り合いの付け方の方針

極端にシンプルに考える. これは,精神状態が不安定になるような事態にあって,自壊せずに過ごす唯一の方法です.

残債についても,シンプルに考えると, 「残債があるところとは,未来永劫,お付き合いの余地は頂けません」ということになります.

当たり前のことです. 約束の不履行があれば,その相手とはその先お付き合いできません. 裁判所が介入するような事案でなくても,同様ですし.

免責5年過ぎたらまた元通りになるとでも思っているのだろうか

などいうtweetも見かけましたが,「そんなわけないでしょw.そんな仮定を思いつくほうがどうかしてるwwww」です.

金融系残債との折り合い

開き直りと自分でも思いつつ,しかし「すみません.でも優先度は低いです」

金融系負債,つまり融資やクレジットカードなどは,利子に,保険料に相当する額(リスクプレミアム)が含まれています.

ふつう,怪我をして生命保険を使うときに,保険会社に「損をさせてすみません」とは言いません. もちろん,頻繁に怪我をしたり,大病をしたりすると,生命保険の更新は拒否されることがあります.

同様に,免責から5年経ったからといって,お金を借りられるとかクレジットカードが作れる,なんて有り得ません. 貸し手にとってみれば,リスク管理上,当然の判断でしょう.

加えて,信用情報データは,相互接続されていて,別の会社ならOKというものでもありません. つまり,人生を通じて,短期長期を問わず,金融機関から融資を受けるという選択肢は,ほぼ無くなります.

これを「社会からの制裁」と受け取るかは,その人次第でしょう. 私は,私自身のことを「制裁などではなく社会の合理であり,自業自得だ」としか思いませんが.

もし仮に,5年経って,借りられる日が来たとしても,私はたぶん融資での資金調達は行わないでしょう. 既に,私は私のことを,どこか信用していませんから.

そんなわけで,折り合いの付け方は,「これからは無借金でやっていきます」と.

未納税等との折り合いの付け方

倒産というのは,突然死ですから,未納税(社会保険料や労働保険料など含む)の未納は残ります. 国家から見れば,法人というのは,稼いで納税するための機械です. それを履行できないということは,恥ずかしいことです. しかも,旧破産法では,税金関係は,分配の優先度が高かったものでした.

しかし,現破産法では,労働債権よりも地位が下がっています. 折り合いの付け方としては,法律がそのように変わるものならば,労働債権を,その瞬間は優先すべきである.

折り合いの付け方は,「納税での貢献は,改めて頑張ろう.」

買掛金との折り合いの付け方

買掛金についてトラブルが起こると,同業では再起不能です. そのことは,業績が良い時でも自覚的でした. なので,自社開発を常としていましたし,買掛金が長く残らないよう,支払いサイトはなるべく短くするようにしていました.

しかし,結果として1社であれ残債が残ったのは,痛恨の極みです. (まだ債権者集会前なので集計が取れていませんが,今回,2社破産のうち,未払い買掛金は1社数万円だろうと思います.)

金融系の残債ほどには,リスクプレミアムは乗っかっていないと思うので,申し訳ないとは思うのですが. 折り合いとしては金融系と同じになります.

労働債権との折り合いの付け方

労働債権…言い換えると,未払い給与です. 新破産法では,ほぼ最優先の債権です. しかし私は,この辺りで,今も悔やむミスをいくつかしています.

長くなりましたので,その辺りは,次回以降に.