社長と投資家の役割,その理解なく明日は来ない

昨日のエントリの反響は大きく,色々な意見がありました. 多くは暖かいご支援で涙が出てきました.

もちろん様々な意見はあり,そのほうが世の中としては健全と思います.

そうは言っても経産省悪くないし

的な意見もありました. 私もそう思います. 見積もりを出してきちんと名簿も積算もしたのに,後出しジャンケンをする. これは,個人的には卑劣だと思いますが, _だってこの国ニッポンの商習慣じゃないですか,これ__ . (と同様のご意見も頂きました)

別に経産省は悪く無いです. ニッポンの商習慣を踏襲しただけです. 昨日のエントリにも書きましたが,私は,黙って机を蹴って退席し,契約印を推さなきゃ良かっただけです.

…だからこそ,この国ニッポンには,未来がない. とも,思いますけれどね.

そんな感じではあるのですが,一つだけ,いい大人がこの理解は無いわ,というご意見があったので,マイルドに晒します.

サポイン事業って研究開発に金出すっていってくれてるんじゃないの?なんで社長の経費が0円で怒ってるのかよくわからないんだよなぁ。

別に怒ってないです.まあ,ネットではよくある誤読です.活字には感情が出てこないですからね.

企業の社長が研究するから金出してくださいっていのもどうかなと思いまして。

ん? なんか変なこと言い出して…ますね….

社長さん(経営者)は投資する側じゃないんですか?

…なるほど,判りました. この方,技術には明るいようですが, 社会の仕組みが解っていないようです.

その後も,

ってか自分質問しかしてないのに、なんで怒られたんだろ?サポイン事業の意義とか教えて欲しかったのに。

とか

まいいや、ちかよらんとこ

など続くのですが,私としては別に怒っちゃいなくて. というか私としては, tweet が,怒るレベルよりも低くて.

ところで,ちょっと何か言われると怒られていると思う人って多いですよね. よほど好戦的なご友人に囲まれた人生を歩まれたのでしょうか.

閑話休題. 「ああ,この国ニッポンって,こういう方,多いよね」って白目になっていただけなのです. とある記事を思い出しながら.

それを聞いて,面白い調査結果を思い出しました.

https://cakes.mu/posts/4241 を思い出していました. 引用します.

藤野 それを聞いて、おもしろい調査結果を思いだしました。3、4年前に、東大の学者や東京証券取引所が協力して、アメリカと日本で経済の知識についての大規模な調査をしたんです。その報告書を見たら、日米の起業家に対する意識の違いが如実に表れていました。「経済における起業家の役割はどれか」という、4択の問題があったんです。1「政府に対して事業機会を伝える人」、2「事業機会に対してリスクを負う人」、3「株の売買をする人」、4「投資家に対してリスクを限定させる人」という選択肢です。

堀江 2以外は、よくわからない選択肢ですね。

藤野 そうですよね。「株の売買をする人」って、ねえ(笑)。もちろん2が正解なんですが、この問題のアメリカの正答率は約90%、日本は約36%だったんです。問題は正答率の低さだけでなく、36%という率が中学、高校、大学、社会人とまったく変化しないことです。

堀江 アメリカの場合はどうなんですか?

藤野 年齢が上がるに従って、正答率が上がっていきます。アメリカでは学校の授業で、経済について教えるんですよね。日本では、資本市場や企業について義務教育の中でほとんど習わない。社会の教科書では2ページしかその部分に割かないんですよ。だから経済についての理解のベースの部分で、日本とアメリカにこれだけの差がある。

「ひふみ投信」で知られる藤野氏と,「ほりえもん」で知られる堀江氏との対談記事です.

私は,アメリカが常に良いとは思いません.

でも,どの国との比較においても,知識が無いほうが良いとは,私はいかなる場面でも,思いません. 知識は大事.それはエンジニアとして生きるための立脚点ですから.

社長さん(経営者)は投資する側じゃないんですか?

いいえ違います. 私の主義主張ではなく,法人というものの成り立ちからして否定できます.

簿記や経営の初歩向けの本を読むと,だいたい最初に,人的会社ができた経緯のエピソードが出てきます.

曰く,

  • 大航海時代に,船長が,貴族から資金を調達した.
  • 船長は,船が沈んだら死ぬ(無限責任),けれども航海中の権力は絶大.貴族への配当をし終えたら,残りは船長のもの.
  • 貴族は,船が沈んでも死なない.出資の範囲でしか損をしない(有限責任).けれど金は出すので配当を得られる.

現代の先進国は物的会社への移行が概ね済んでおり,社長(代表者・船長)でも有限責任を選択できます. …ああ,代表者に連帯責任を取らせないと何も進まない,この国ニッポンという例外はありますね(頭痛い).

ええと,大筋に戻ると,社長は,投資を受ける側で,投資をする側ではありません. 大航海時代の昔からです.

もちろん,社長が投資側に廻る,つまりキャピタリストやエンジェルになるというケースはあります. これは将棋でいう金成りですね.”と金”は成った時点で”金”であり”歩” ではありません.

金成りを成功事例と呼ぶのが相応しいのかには論の余地があると思いますが,少なくともIT業界では成功と見做されがちです. 一方で,広く世間を見渡すと,生涯社長で終わるのも,それはそれで評価を受けます.

てなことを

Web日記1日分を使って説明しなきゃいけない世の中って,たぶんどこかで公教育が歪んでいると思いますし,そういう説明が必要な大人が多数派であるならば,この国ニッポンが再浮上することもないのかなと思います.個人的には好きなのだけれどな,日本という国は.

怒っているわけではないのです. 悲嘆に暮れているのですよ.