スタートアップで優秀な技術者を探す方法

雇用はいちばん難しい

かつてお世話になった方が,起業計画中とのことで,相談を受けた. 私は,起業家としては失格の部類なのだけれども,スタートアップの空気感は解る,みたいなレベルではあるので,返事を書いた.

送信後,読みなおしたら割と一般論っぽかったので,ちょちょいと書きなおして当日記にも載せておく. ついでにセルフツッコミも入れておく.

のっけから自分の話の腰を折るが,スタートアップでは”一般論”は”役に立つ”を意味しない. 毒にも薬にもならない,ってことだ.

優秀な技術者の雇用ですか…これは一番難しい問題ですね. たぶん私自身もあと20年くらい悩み,挙句に答え出ないかも….

私自身の近況に限って言えば,もう新規の雇用は止めました.法定福利や源泉税務にかかる手間を考えると,どんなに優秀な技術者であっても割に合いません. (日本の雇用行政は,本当に不合理非効率だと思います) 省いた手間は,費用に応じフリー技術者への委託をする際の,報酬の上積みに当てています.

…というのは,人的規模の拡大は諦めてしまった悪めのケースです.

一般論として,スタートアップの雇用は,紹介が最善かなと思います. 優秀な方は優秀な方を知っていますから,優秀な方に心当たりを尋ねるのが確実です.

私は優秀ではないけれども,業界内ではそれなりに目立ってはいたので,人材を探しているという旨の紹介はときどき受ける. そんなときは,私よりも優秀な方に,お心当たりが無いかどうかを尋ねるといったようなことはする.

私の職業は人材紹介業ではないので,報酬は頂かない. そのかわり,信用できる相談者でなければ,行動を起こさない.

こういった信頼の鎖に入れるかどうかは,雇用を考えるスタートアップにとって,第一の壁だろうと思う. 壁の高さは,その集団の能力の高さに比例する.たぶん.

スタートアップを考えてからでは遅い.信頼は作るのに時間がかかるから. 壊れるのは一瞬なのに.

他に多いのは,いわゆる”IT系勉強会”のようなところで,活きがいいのを一本釣りしてくるという方法です. 同業で固まって酒のんで,チャラい感じはありますが…. 発表で技術力は測れますし,人柄についての照会も容易ですので. これも身の回りのスタートアップではよくやっている手です. ナナロク世代の若手におだてられて,たまに手伝っています.

イベント.ミートアップみたいなやつ. 地べたを這いつくばっている組込み系から見ると,正直Webチャラいよとか思わなくもないけれど. ハズレを引かないよう事前にお互いを知っておくというのは,至極当然だし.

むしろ組込み系の雇用流動性の低さを,どげんかせんといかんかもね. こういうイベントが少ない,要らないってことについて.

反対に,成功例を見たことがないのが,人材紹介会社や求人サイトを経由した採用です. 人海戦術的なビジネスモデルを立てているところは別ですが,どんなに優秀なヘッドハンタを使っても,ダメなようです.

これは,私周辺の狭い範囲の観測なので,ハズレていたら謝る. ただ,本当に成功例の記憶がないんだよねぇ…. たぶん,下記の理由なのだろうと推測している.

不思議なものですが,採用に際し,関わった知人が多いと, どんなにドライな人柄であったとしても,そうそう独善な行動は しないものである,ということなのかもしれません.

スタートアップって,どんなにお互いが誠意を尽くしてもなお,不条理に出くわしたり,金銭的に,工数的にしんどかったり,いろいろあるから.

採用は,本当に,難しいです.

(しみじみと)